大河内山荘は百人一首で著名な小倉山の南面約二万平方米の荒地に、時代劇の名優大河内傳次郎(1898-1962)が、古都の霊峰に魅せられて、こつこつと創りあげた庭園です。
フィルムではない、消えることのない美を求めて、昭和6年(1931年/34歳)から、64歳で逝去するまで、30年の歳月にわたり、映画の出演料の大半をこの庭に注ぎ込みました。
この山荘は、単にスターの別荘というものではありません、傳次郎の生命を凝縮した創作であり、いのちをかけた創造の場でした。
庭は借景庭園で、多くの赤松や四季を彩る桜やもみじにつつまれた大乗閣からは、嵐山を背に、霊峰比叡山、大文字、東山三十六峰、徒然草ゆかりの双ヶ丘が、また草庵風の茶室、滴水庵を少し登ると保津川の清流が眼下に見えます。
これらは傳次郎が生涯求めてやまなかった禅の境地とでも申しましょうか、皆様にも是非この興趣を楽しんでいただければ、幸甚と存じます。 |